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 檜皮は古くから日本固有の特殊な方法で生産されます。木箆(へら)、振り縄 (縄の両端に長さ四十センチ、太さ三センチほどの振り棒を結びつけたもの)、腰鉈、胴切包丁などの工具を使い、檜の八十年以上に生長したものを立木のまま外皮を剥ぎ取る方法です。
 木の生長にもっとも大切な表皮内部の形成層である白い色の部分を傷つけないよう注意しながら、この部分と外部の檜皮色の部分との間に木箆を差し込み、根元から手の届く程度まで箆を送り上げながら、皮を切ったり、割れ目ができないよう注意して木の周囲を剥ぎ上げ、さらに両手でしっかりと持って剥ぎのばし、剥がした皮はそのまま垂らしておきます。この時の皮の幅は約二十五センチ位とします。
 それより上は、剥いだ皮の下側に振り棒を振り縄で縛って第一段の足掛かりをつくり、振り棒の上に身体を移して保身縄 (腰縄) で身体を安定させ、根元から剥ぎ上げた皮を連続して同じように剥ぎ上げていきます。この作業を繰り返して行い、ほぼ一の枝の高さまで達した時点で剥ぎのばした皮を手鉈で切り、皮の腰を打たないように下に落とします。その切り口から再び最初に箆を入れた時と同様の工程で順次剥ぎ登っていきます。木の末部分のフシなどで製品にならないところに至ると剥いだ皮を切り落とし、足掛かりを残して綱を使って下り、最後の振り棒は地上から綱を振り戻して落とします。この技法は非常に危険なため、十分な注意が必要です。
 檜皮の採取時期は、土地の気候と寒暖によって多少の違いはありますが、採取する立木への負担を考慮して、秋は八月の盆頃(盆皮という)から、翌年の四月中旬までの、栄養水分の流動の少ない期間に行います。採取時期によって、それぞれ「秋皮」 「春皮」と呼ばれますが、その相違はそれほど明確ではありません。

用途別に整えるため
        熟練の技で行う檜皮拵え

危険をともなう特殊な檜皮剥ぎの技法

産地によって異なる檜皮の特徴
 剥いだ檜皮の原皮は、屋根の葺き手間の能率を上げるため、檜皮拵え(下仕事または皮切りともいいます)を行います。この作業には、檜皮を裁断する「当(あて)」という檜または松で作られた台と包丁を使います。檜皮拵えには「洗皮」と「綴皮」の二工程があり、そのうち、「洗皮」は檜皮の原皮を、用途別に仕分ける工程で、原皮を順次上から平皮用、軒皮用、生皮用、上目皮用に削り上げていきます。その他、長軒皮、軒積皮、留皮、谷皮、唐破風用面皮、唐破風鏡皮、唐破風絵振台用皮に適するように仕分けられます。
 そのうち、原皮の大部分が仕上げられる平皮は、原皮を通常七十五センチ、厚さ一・五〜一・八ミリに剥ぎ、フシ・ヤニなどを丁寧に包丁で削り揃えたものです。この洗皮で仕分けられた平皮(十間束)が二〜三束になった時点で行うのが綴皮です。特殊な檜皮包丁で綴り合わせる工法で、皮拵えのうち、最も熟練の技を要する作業です。

 檜皮は、産地によってさまざまな名称で呼ばれます。【丹波皮】 黒背皮を意味し、五〜六十年生の立木の荒皮を剥ぎ取った後、七〜八年目くらいから剥いだ二番皮で、黒味の光沢が特徴。京都府・兵庫県・奈良県・大阪府などで生産され、主に文化財建造物の屋根葺きに使われます。【木曽皮】 木曽の伐採木から生産される檜皮。
【櫻井皮】 京阪神地方の五〜六十年生の伐採木から採られます。
【高野皮】 かつて高野山の金剛峰寺が管理する山林から生産され、全国最高の生産量を誇っていました。